なぜ今、屋根置きの太陽光発電が広がっていっているのか?(GX/脱炭素トピック)

2012年に固定価格買取制度(FIT)がスタートして以来、太陽光発電の導入容量は劇的に増えましたが、近年、太陽光発電の導入形態は大きな転換点を迎えています。

特に注目されるのが、地上設置型から屋根置き太陽光発電へのシフトです。この背景には、エネルギー政策の転換と電力システムの物理的制約という、二つの重要な要因があります。

FIT制度における制度設計の大転換

地上設置太陽光発電と事業用の屋根置き太陽光発電では、現在のFIT制度において大きく異なる扱いを受けています。地上設置型については、買取価格が年々低下を続けており、2024年時点では1kWh当たり10円台まで低下しています。

さらに、経済産業省の検討会では、今後のFIT制度の対象から地上設置太陽光発電を除外することが検討されています。

一方で、事業用の屋根置き太陽光発電は、制度設計の上で明確に異なる扱いを受けています。

2024年度のFIT制度では、事業用屋根置き太陽光発電の買取単価は、導入から5年間は相対的に高い水準に設定されており、その後の年数においても段階的な低下に留まるよう設計されています。

さらに重要なのは、事業用屋根置き太陽光発電については、今後もFIT制度の対象として継続されることが明確に示されているという点です。つまり、政策当局は、事業用屋根置き太陽光発電については中長期的な導入拡大を意図しており、地上設置とは全く異なるシナリオを描いているわけです。

この制度設計の違いは、電力システム全体の安定性を確保するための戦略的な選択だとも言えます。

電力系統への影響という本質的課題

ここで重要となるのが、電力系統の物理的な制約の問題です。

太陽光発電から供給される電力量が増加しすぎると、電力系統では周波数や電圧の維持が困難になります。特に地上設置の大規模太陽光発電所は、電力需要から遠く離れた場所に設置されることが多いため、発電された不安定な電力の多くが長距離で送電される必要があります。これは系統に対して大きな負荷をかけることになり、電力の品質を低下させるリスクが高まるのです。

こうした理由から、国のエネルギー政策は「必要な場所で、必要な量の電力を、効率的に供給する」自家消費へのシフトを求めています。地上設置太陽光発電への優遇措置を段階的に縮小し、最終的には対象から除外することで、今後の過度な導入拡大を防ぎたいというのが、政策当局の明確な意図なのです

これに対して、屋根置き太陽光発電であれば、電力の需要がすぐ近くに存在するため、工場や商業施設、事務所の屋根に設置された太陽光発電システムから発生する電力は、その大部分が施設内で自家消費されることになるのです。

その結果、電力系統に流入する電力量は大幅に制限され、系統への負荷が最小化されます。つまり、屋根置き太陽光発電は、エネルギーの地産地消を実現し、電力系統の安定性と持続可能性の両立を可能にするシステムとして位置づけられているわけです。

屋根置き太陽光発電の導入形態の選択肢

屋根置き太陽光発電を導入する際には、複数の方式から選択することができます。それぞれに異なる特徴があり、企業や施設の経営方針に応じた最適な選択が求められます。

自己所有型は、設備を全額自己負担で購入し、所有・運用する方式です。メリットとしては、発電した電力やシステムを自由に活用できます。また、経営年数が長くなれば減価償却を通じた税務メリットも期待できます。一方、デメリットとしては、初期投資が高額であり、保守・メンテナンス費用は全て自社負担となることが挙げられます。

リース方式では、太陽光発電設備をリース会社から借り入れ、月額のリース料を支払う形態です。メリットは、初期投資を大幅に削減でき、保守・メンテナンスを一任できるリース会社も存在している点です。また、設備の故障リスクもリース会社が負担します。デメリットとしては、月額費用が継続的に発生し、長期的にはコスト効率が自己所有型に劣る可能性があることです。

PPA(Power Purchase Agreement)方式は、第三者の事業者が屋根を借り受けて太陽光発電設備を設置・運用し、そこから生まれた電力を購入する仕組みです。メリットとしては、初期投資がゼロで太陽光発電を導入でき、設備の保守・メンテナンスは全て事業者に委ねることができます。デメリットとしては、契約期間中は屋根のコントロール権が制限され、発電した電力の用途についても選択肢が限定されることがあります。また、PPA契約による月額の電力購入費用はよくも悪くも固定される場合が多いです。

以下の表は、これら三つの導入形態を、複数の観点から比較したものです。

項目自己所有型リース方式PPA方式
初期投資高額低額ほぼゼロ
月額費用なしありあり
保守・メンテナンス自社負担事業者負担事業者負担
発電電力の活用完全自由自由制限あり
税務メリットあり限定的なし
長期的コスト効率最も有利中程度リースにやや劣る

今後の展望

近年の屋根置き太陽光発電の広がりは、電力系統の安定性を確保しながら、再生可能エネルギーの導入を加速させるという課題に対する、政策当局のエネルギー政策の戦略的な転換を反映しています。

企業や施設の経営者にとっては、自社の経営状況や長期的な経営戦略に応じて、自己所有型、リース方式、PPA方式の中から最適な形態を選択することが求められるでしょう。

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この記事を書いた人

四谷 友騎
四谷 友騎SMBDパートナーシップ株式会社代表
GX/脱炭素と新規事業創出の専門家として、企業の支援を行う。大学卒業後はシャープグループにて300MW以上の太陽光発電所の建設/開発に従事。
その後、デロイトトーマツコンサルティングにて中央官庁や地方自治体の地域脱炭素政策を支援。
令和7年度からは兵庫県カーボンニュートラル支援専門家としても登録。社会人大学院にて新規事業構想を研究。これまでの経験を活かし、企業のGX/脱炭素化の伴走支援を通じて、持続的に発展可能な社会の実現を目指している。

【委員等活動】
カーボンニュートラル支援専門家(兵庫県)

【所有資格】
環境省認定制度 脱炭素シニアアドバイザー
第3種電気主任技術者
事業承継・M&Aエキスパート