地域金融機関による企業の脱炭素の後押し:サステナブルファイナンスについて解説(GX・脱炭素トピック)

サステナブルファイナンスの基本的な考え方
サステナブルファイナンスとは、「持続可能な社会を実現するための金融」を指します。環境省や金融庁の整理では、環境・社会課題の解決に資する事業への資金供給や、企業の取組みと融資条件を連動させる仕組みなどを包括する概念とされています。
2015年のパリ協定の採択以降、世界的に脱炭素への資金需要は急拡大しており、IEAの試算では、1.5℃目標の達成には2030年までにクリーンエネルギー分野への年間投資額を約4兆ドル規模まで引き上げる必要があるとされています。
サステナブルファイナンスには、いくつかの主要な類型があります。調達資金の使途をグリーン事業に限定する「グリーンローン」や「グリーンボンド」、借り手の環境目標(KPI)の達成度に応じて金利などの条件が変動する「サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)」、移行段階にある企業の脱炭素への取組みを支援する「トランジション・ファイナンス」、企業活動が環境・社会に与えるインパクトを評価する「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」などが挙げられます。
地域金融機関に期待される役割
大企業であれば、自ら排出量の開示や削減目標の設定を進めることができますが、地域の中小企業の多くは、そうした知見や人材を十分に持っていません。サプライチェーンの末端に位置する中小企業は、取引先である大企業から排出量の削減を求められるケースが増えており、地域金融機関は、顧客との日常的な関係を通じて、その課題を最も早く把握できる立場にあります。
全国地方銀行協会の調査(2024年10月時点)によれば、回答した62行のすべてが何らかの脱炭素関連の資金面・非資金面の支援を行っており、CO2排出量の可視化サービスの提供(59行)や、省エネ・脱炭素に関するセミナーの実施(56行)などが広く浸透しています。
金融という本業を軸に、情報提供やコンサルティングを組み合わせることで、中小企業の脱炭素を伴走支援する体制づくりが進んでいるといえます。
弊社もGX・脱炭素のプロフェッショナルファームとして、こうした金融機関の取組と連携して、企業の脱炭素を強力に後押ししております。
地域金融機関の取組事例
(1)静岡銀行:地域連携による排出量算定基盤の構築
静岡銀行は、温室効果ガス排出量算定ツール「しずおかGXサポート」を静岡県内の全地域金融機関に開放しました。
個社の排出量を算定する仕組みを地域全体で共有することで、中小企業が脱炭素に取り組みやすい環境を整えています。
さらに県内の自治体を含めた共創関係を構築し、中小企業の脱炭素化に向けた機運を高めている点も評価されています。環境省の「第6回ESGファイナンス・アワード・ジャパン」で金賞を受賞しました。
(2)滋賀銀行:グリーン預金を起点とした地域内資金循環
滋賀銀行は、地方銀行として初めて円・外貨の両通貨建てグリーン預金を発行し、調達した資金の使途に、グループ会社「株式会社しがぎんエナジー」が手掛ける再生可能エネルギー事業を含めました。預金で集めた資金が地域の再エネ事業へと還流する仕組みを構築した点が特徴です。
また、脱炭素関連融資の利用実績に応じて寄付を行う「未来よし+」の仕組みを通じて購入したJ-クレジットを、「びわ湖マラソン」等のカーボンオフセットに活用するなど、金融と地域イベントを結び付けた取組みも展開しています。
(3)千葉銀行:「いちかわクリーンエネルギー株式会社」の設立
千葉銀行は、2025年1月、市川市、京葉ガス株式会社とともに、地域新電力会社「いちかわクリーンエネルギー株式会社」を設立しました。同社は、市川市のカーボンニュートラルの核となる施策の一環として、クリーンな電力(環境価値を有する電気)を市内に供給し、地域経済の域内循環を高めることとしています。
これからの地域金融機関に求められること
今後、地域金融機関が取り組むべき課題は、大きく三点に整理できます。
第一に、融資先の排出量データを継続的に把握し、ファイナンスド・エミッション(投融資に伴う排出量)の算定・開示を進めることです。第二に、顧客の事業特性に応じたトランジション・ファイナンスなど、業種ごとの移行を支える金融手法を組み立てることです。第三に、行内の人材育成とサステナブルファイナンスに関する体制整備です。
一部の金融機関では、従業員に脱炭素アドバイザーの資格取得を推奨しているように、人材への投資は今後の競争力を左右する要素になります。
サステナブルファイナンスは、単なる環境配慮のラベルではなく、地域の産業構造を転換し、持続的な成長を実現するための本業そのものです。
地域金融機関と共に、企業の脱炭素と地域の成長をどのように両立させるか、その道筋を一緒に描いていくことが、私たちプロフェッショナルファームの大きな役割であると考えています。
弊社の企業の脱炭素への支援実績を確認されたい方は、こちらからご覧ください。
【参照資料】
・地方銀行における環境・気候変動問題への取り組み(一般社団法人 全国地方銀行協会)
・サステナブルファイナンス推進の取り組み(金融庁)
・CO2見える化とその先に(全国銀行協会)
この記事を書いた人

- SMBDパートナーシップ株式会社代表
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GX/脱炭素と新規事業創出の専門家として、企業の支援を行う。大学卒業後はシャープグループにて300MW以上の太陽光発電所の建設/開発に従事。
その後、デロイトトーマツコンサルティングにて中央官庁や地方自治体の地域脱炭素政策を支援。
令和7年度からは兵庫県カーボンニュートラル支援専門家としても登録。社会人大学院にて新規事業構想を研究。これまでの経験を活かし、企業のGX/脱炭素化の伴走支援を通じて、持続的に発展可能な社会の実現を目指している。
【委員等活動】
カーボンニュートラル支援専門家(兵庫県)
【所有資格】
環境省認定制度 脱炭素シニアアドバイザー
第3種電気主任技術者
事業承継・M&Aエキスパート





