NTTグループのIOWN技術:次世代通信インフラが脱炭素社会の実現に果たす役割(GX/脱炭素トピック)

IOWNの脱炭素化への貢献

デジタル社会の急速な進展に伴い、通信インフラの需要は急増している。一方で、情報量の爆発的な増加によるICT機器の電力消費量増加が深刻な課題となっている。経済産業省の調査によると、2006年比で2025年までにインターネットの情報流通量は190倍になったとされ、ICTインフラの消費電力量は、今後急増していくと予想されている。日本全体の電力需要の約1%を占めるNTTグループにとって、カーボンニュートラルの実現と通信インフラの向上を両立させることは、単なる企業戦略ではなく、社会への責務である。本稿では、NTTグループが開発するIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)技術の革新性と、その脱炭素への貢献について解説する。

IOWN技術の革新性

IOWN構想は、従来の電子技術が直面する限界を克服するために開発された次世代情報通信基盤である。その核となるのが、NTTが世界で初めて開発した「光トランジスタ」という最新鋭技術である。光技術による「伝送」と電子技術による「処理」を融合したこの技術は、ネットワーク・コンピューティング・端末に至るまで光を活用することで、従来比で電力消費量を100分の1に削減しながら、同時に125倍の大容量情報を遅延なく処理することを可能にする。

IOWN技術の特徴は三つの要素にまとめられる。第一に超高速・大容量性である。データセンターやAI処理、量子コンピュータなど、膨大な計算リソースが必要な領域での応用が期待される。第二に超低遅延性であり、リアルタイムデータ処理による信号のない道路実現や、遠隔地での臨場感のある映像配信が可能になる。第三に超低消費電力性であり、従来方式の通信は電気信号で行われている部分が多いたため、電気抵抗によるエネルギーロスが大きかったが、IOWNは光信号で通信することから、エネルギーロスが少ないため、消費電力が小さくて済む。これがカーボンニュートラル実現の鍵となる要素である。NTTグループは2026年までのIOWN技術の商用導入や、2028年度以降の自衛隊の部隊や基地への導入・本格運用を目指し、研究開発を進めている。

脱炭素への具体的な貢献

2021年、NTTグループは新環境エネルギービジョン「NTT Green Innovation toward 2040」を策定した。このビジョンは、2030年までに温室効果ガス排出量を80%削減(2013年度比)し、2040年までにカーボンニュートラルを実現することを目標としている。実現のための方策は再生可能エネルギー利用の拡大とIOWN導入による電力消費量削減の二つの軸で進められている。

IOWN技術がもたらす脱炭素効果は顕著である。2040年までには、IOWN導入により同社のCO2排出量の45%削減が見通されている。通信ネットワークで増加する情報流通量に対応しながら、劇的に消費電力を抑制できるこの技術は、数十年単位の長期的な環境目標達成の有力な手段となる。さらにNTTグループは、NECなど他企業とも脱炭素社会の実現に向けた連携を強化しており、業界全体での波及効果も期待できる。

ビジネスイノベーションと持続可能な社会の実現

IOWN構想の重要な側面は、環境課題の解決と経済成長を同時に実現することにある。NTTは「パラコンシステント・ワールド」というビジョンで、一見矛盾する二つの目標を両立させようとしている。理論上、充電を意識せずに使用し続けられるスマートフォンの実現や、ヘルスケア領域での高度な未来予測、スマート社会の基盤構築など、IOWN技術の応用領域は広がっている。これらは単なる技術進化ではなく、人間がテクノロジーを自然に享受できる社会、つまり「デジタルからナチュラルへ」の転換をもたらすものである。

おわりに

NTTグループのIOWN技術は、デジタル社会のエネルギー危機に対する革新的な解決策である。超低消費電力を実現する光技術により、急増する通信需要に対応しながら脱炭素社会の実現を目指す同技術は、単一企業の環境戦略にとどまらず、社会全体のサステナビリティ向上に貢献する基盤となる。2030年、2040年の環境目標達成に向けた同社の取り組みは、日本のグリーン技術戦略における先導的な役割を担うことになるだろう。

弊社の支援実績はこちらからご覧いただけます。

参照資料

この記事を書いた人

四谷 友騎
四谷 友騎SMBDパートナーシップ株式会社代表
GX/脱炭素と新規事業創出の専門家として、企業の支援を行う。大学卒業後はシャープグループにて300MW以上の太陽光発電所の建設/開発に従事。
その後、デロイトトーマツコンサルティングにて中央官庁や地方自治体の地域脱炭素政策を支援。
令和7年度からは兵庫県カーボンニュートラル支援専門家としても登録。社会人大学院にて新規事業構想を研究。これまでの経験を活かし、企業のGX/脱炭素化の伴走支援を通じて、持続的に発展可能な社会の実現を目指している。

【委員等活動】
カーボンニュートラル支援専門家(兵庫県)

【所有資格】
環境省認定制度 脱炭素シニアアドバイザー
第3種電気主任技術者
事業承継・M&Aエキスパート